婚活予備校「魔女のサバト」の黒魔女・川崎貴子さんと小説『婚活1000本ノック』の著者・南綾子さんに、「婚活の荒波にも 簡単にへこたれない 自分のつくり方」をテーマに対談していただきました。全3回。
※対談は、2024年8月に行いました
婚活を続けるには、理由が必要?
川崎 そうですね。結婚相談所もアプリもそれぞれの難しさがあると思います。で、そんな厳しい現実の中で『婚活1000本ノック』の主人公・南さんは次々訪れるクセ強男子に振り回されながらも、果敢に婚活に挑んでいたと思います。そのパワーはどこからきていたのでしょうか?
南 『結婚のためなら死んでもいい』(新潮社)の解説でライターの清田さんが「生きるために婚活している」と書いてくださって、本当にそうだなって納得したのを思い出しました。これはあくまで私のケースですが、婚活スタート時、なんとなく最終的には結婚をあきらめるじゃないかなって、薄々勘付いていて。結婚のイメージもわかないし、向いてないし、よっぽど奇跡的な出会いがない限りはいずれ諦めるんだろうなって。でも、その一方で、32、3歳で諦めるのは、早すぎるというか、余生が長すぎるとも思っていました。だから、わずかな奇跡を求めて活動しまくらないと、若者時代が終わっちゃうって思っていた気がします。もちろん、小説を書くためっていうのもありましたけどね。とにかく、必死でした。
川崎 婚活を自分に課してたって感じでしょうか?
南 まさに、そんな感じの時がありました。育った地元の土地柄の影響もあって、結婚しなきゃって焦っていた気がします。両親からは結婚をせかされるようなことはなかったんですけど、名古屋というコンサバティブな土地柄だったので、同級生が結婚して実家の近くに家建ててみたいなのが当たり前だったりしたので、結婚しなきゃまずいだろうみたいに思っていた節はありますね。それで、結婚するならエンジニア系の方に絞るしかないと、そういう人たちと会って。でも、一緒にいても退屈なんですよ。映画見ても、面白かったねくらいしか言わないし。私、いろいろ話し合いたい性なので、退屈というか、だんだん萎えてきて・・・。刺激的な男の人を求めるなら、もはや婚活じゃないな、と結婚自体、諦めた方が楽かもって、徐々にトーンダウンしていった感じですね。
婚活をしてみて、やっぱり結婚しなくていいという結論に達してもいい
川崎 ちなみに、必死に婚活していた時、小説の中の幽霊の山田みたいな婚活をサポートしてくれる、寄り添ってくれる存在はいたんですか?
南 幽霊の山田みたいにアドバイスしてくれる存在はいなかったですね。ただ、編集さんがたまに相談に乗ってくれていました。
川崎 その時にお会いしたかったです。サバトとして。
南 そう思います。川崎さんみたいな方がサポートしてくれたら結果が違ったかもしれませんねw でも、結果的に結婚しなくて良かったです。
川崎 そこが大事だと思うんですよね。私たちも結婚しなきゃいけないっていうのはおかしいって思っていますし。私自身、結婚が向いているかって問われると、正直、謎なところがありますし。ただ、やってみないとわからないことってあると思うんですよね。それに、うっすらでも結婚したいって思っていたのに、私、何もしなかったなって後悔してほしくはないんです。やってみて、自分には必要ないなって結論に達したのなら、それで良いと思います。大切なのは、そこに気づけることだと。実際、私の周囲にもめちゃくちゃ幸せそうな独身はたくさんいますし。
南 それは本当に思います。
何かと大変な婚活。モチベーションを維持する秘訣とは
川崎 とはいえ、やっぱり婚活中ってすごく大変じゃないですか。いろんな人に会うし、
時間もお金もかかるし、手間もかかるし、面倒くさいし。そういうとき、南さん的リカバリー方法ってありますか?
南 個人的な話なので、婚活中の皆さんにはなんの役に立たない話だと思いますが、私の場合は、「この嫌な気持ちを全部、お金にする!」って思って奮い立たせていましたね。おかげさまで、ドラマ化されてしっかり回収できたんで、今はなんの悔いもありませんw
川崎 作家の林真理子さんも同じことおっしゃっていました。別れた後、絶対この男で一本書いてやるってw
南 わかるなぁ〜。変な人と会う度にこれ絶対原稿にしてお金にするって、もうそれしかなかったw
川崎 おいしいものを食べるとか、お酒も飲むとか、そういう逃避系には走らなかったんですか?
南 そういうのもありました。婚活している友達がいたので、愚痴を言ったりしていました。
川崎 同時期に婚活している仲間がいるってすごい大事ですよね。婚活の愚痴って会社の人には言いづらいですし、下手に会社の人から「理想が高すぎるのよ」なんて言われちゃったら、ますます落ちかねない。
南 わかります。余計なこと言われるのは本当にきついですよね。
川崎 そうなんですよ。だから同じ時期に婚活仲間がいるっていうのはすごく心強いんだろうなと、婚活予備校「魔女のサバト」(以下「サバト」の生徒たちを見ていて思います。実際、「サバト」の同期生を見てると、そこから出会いが繋がることもあります。例えば、私はバーベキュー婚活は合わなかったけど、何々ちゃんは合うと思うよみたいな情報交換がきっかけになったりして。結局、婚活って情報戦みたいなところがあるから。
南 そうですね。当時は特にアプリがない分、人とのつながりが肝でしたね。人から人へ「わらしべ長者」みたいに辿っていけるかが重要だったんで。
川崎 今はアプリが細分化されていて、こういうタイプの男性を選ぶんだったらこういうアプリ、こういう女性が使うんなら、こういうアプリみたいになっていて、複雑化しているので、悩ましいところでもありますが。
南 でも、今みたいにツールが充実していなかった頃に婚活していた身としては、羨ましい気もしますけどね。
婚活は女をあげる? 婚活していてよかったこととは
川崎 物語の中で主人公は、婚活を通して自分と向き合って、自分の大切なものの解像度を上げ、成長しているようにすごい感じる作品だったなって思いますけど、南さん自身、婚活してよかった。これを得たなっていうことってありますか?
南 また、身も蓋もないことを言いますけど、私は作家なので、作品がドラマになったことですかね。あと、「婚活」ってテーマを得たことで、作家生命も延びましたし、(婚活に)足を向けて寝れないです。
川崎 すごく魅力的な主人公でしたよね。
南 実際の私は、小説の前半部分のあの人はやだ、この人やだって言っては、手軽なその辺の遊び人の人に引っかかって遊ばれるみたいなことを、ずっとぐるぐるしていた感じです。覚悟できてない状態で婚活に参入しちゃったから、ドラマのハートパイみたいな人に会っては、違うなって。そうかと思えば、見た目が良くて口がうまい山田みたいな人が楽だからと、フラフラ靡いてしまったり。だから、当初は(小説に中の)主人公、全然成長してないですよと、編集さんから指摘されちゃったくらいで。小説の方は、「小池」ってキャラクターを登場させることでひたむきな主人公になりましたが、そこは完全にフィクションです。リアルな方の主人公、つまり私はドラマの3話くらいまでをぐるぐるしている感じでした。
川崎 でも、それはそれで大変勉強になるというか、共感した人も多かったと思います。
南 まあそうですね。私とは違うルートに行かないとダメだよっていう、反面教師になればw
何となくではなく、目的や期限を設けて取り組んでみて
川崎 最後に婚活女子の皆さんにメッセージをいただけますか?
南 3ヶ月やって、結婚できなかったらやめたらやめた方がいいのかなって思います。
川崎 時間も区切った方がいいって感じですか?
南 時間もそうですけど、気持ちの問題かな。「絶対、結婚する」って覚悟できたら、自分に設ける時間として例えば半年、できれば3ヶ月で相手を見つけるって決めて、とにかく婚活をやり切る。期限が過ぎちゃったら、一旦、やめた方がいいのではないかと。で、また「やっぱり結婚したい」って思うんだったら、もう一回やる。女の人って、一生ダイエットみたいなところがあるじゃないですか。子どもは作らないって決めているなら、死ぬまで婚活でもいいのかなって思いますけど、やっぱり結婚したい!って思っているのなら、ちゃんと結婚を目掛けていった方がいいと思います。
川崎 迷いを払拭できれば、婚活に真っ直ぐに向き合えるようになりますからね。
南 絶対、結婚したい!って腹をくくれれば、男性に対する見方を無理くりでも変えることもできるんじゃないかと。前述のエンジニア系の男性も、ドキドキ・ワクワクな恋愛向きではないかもしれないけれど、目指す結婚生活にはぴったりかもしれないわけで。いい人いないって嘆くより、目的にコミットして吟味すると結婚が近づくのでは?と思います。
川崎 とことん婚活に向き合って、自分と対話して、「私には結婚はいらないかも」って納得できたのなら、結婚にこだわらない幸せを目指せばいいだけですしね。実際、私の周りにも、めちゃくちゃ幸せそうな独身、たくさんいますし。
南 シンプルに考えればいいと思います。結婚するのもありだし、しないのもあり。ただ、後悔しないようにすることが大事。
川崎 そのためにも、「結婚しない」と決められないなら、婚活に取り組むのはありってことですね。本日は、有意義なお話、ありがとうございました。
今回の対談ゲスト 南綾子さんのプロフィール
南綾子さん
1981年愛知県名古屋市生れ。 2005年「夏がおわる」で第4回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。 おもな著作に『ほしいあいたいすきいれて』『ベイビィ、ワンモアタイム』『わたしの好きなおじさん』『すべてわたしがやりました』など。 今後の人生の目標は、カップ焼きそばの頻度を月三以下に抑えること。
写真:©新潮社写真部
今回の対談を主催した 魔女のサバト 川崎貴子のプロフィー
リントス代表。25歳のときに、働く女性のための人材コンサルティング会社を設立。
以来、一貫して「働く女性の成功・成長・幸せをサポート」する仕事に携わり、人材紹介事業や教育事業、女性活躍支援コンサルティング事業などを展開。
現在は、リントス代表、ベランダ株式会社取締役。著書に『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる』など。2児の母。