結婚なんてまっぴらごめん
私は「魔女のサバト」という婚活予備校で白魔女を名乗っている。
小学生時代、同級生の女の子たちが
「早くお嫁さんになりたい〜」
などとキャッキャしている傍で、ニコニコしてはいたけれど、内心は「呑気でいいわねえ」と憂いていた。
だって、魔女なんだもん。
人間と結婚できるわけないしなあ。
奥様は魔女?(←古)あれはドラマの話。
そもそも、私の母親や従姉妹たちを見ていたら、同族だからと有無を言わさず結婚させられているようで、そんな結婚、まっぴらごめんと思っていた。
30代後半、理想の親の娘になる
だが、20代前半で父親が他界すると、母親が「人間になってもいい」とか言い出した。
自分も人間になりたかったんだとか。
特殊環境で生まれたメリットもある。
「なんで私、この生まれ?」
などと早くから生きる意味を考えるようになったので、社会に出ると評価されることも増えた。
魔女であることを概ね隠して生きていたが、20代後半くらいになると、親しくなった人にはチラッと踏み絵を出して、敵か味方かを判断するようになる。
「ダーリンなんていない」と、思いながら、本当はありのままの自分を受け入れてくれる存在を期待していたのかもしれない。
そんな矢先に出会ったのが元夫。
特殊環境な上、両親ともにエキセントリックだった私にとって、彼の両親は長年憧れ続けた「理想の親」だった。
彼らは魔女の踏み絵など軽々と飛び越えて、家族として迎え入れてくれた。
私、アラフォーにして理想の親を手に入れる。
これは、足りない何かを埋めるのに十分すぎる経験だった。
追体験といえば、息子の存在も大きいだろう。息子の育児は「育自」となって、自分の育て直しができているように思う。
50歳で卒婚、そして拡大家族へ
しかし、結婚生活は10年を過ぎたあたりから、アーリーリタイヤしたい夫と、仕事に意義を感じながら生きたい私との間で生き方のすれ違いが目立つようになった。
40代後半、50代の自分を想像したとき、セミナールーム付の長屋で、気の置けない仲間たちと職住融合しているイメージが湧き上がった。
そこは、自分の使命を生きようと前を向く、たくさんの女性たちが集うパワースポット。
何より、息子にカッコいい大人の姿を見せたいと思った。
父親は自営業で家で仕事をしていて、後姿を見て育ったことも影響しているかもしれない。
夫と話し合い、50歳で卒婚。
そして、会社員時代からこれまで、もう20年以上仕事を一緒にしているビジネスパートナーのつっちー(女性)と長屋生活をスタートさせた。
つっちーは兼ねてより「結婚はしない」と決めていて(そういう生き方もあり!)、老犬の介護をしていたこともあり、職住融合の長屋計画を提案をすると快諾してくれた。
もちろんつっちーも、息子に見せたいカッコいい大人の一人である。
息子はつっちーを第二の母のように慕っていて、一緒に住むと伝えたときには「やったー!」とガッツポーズで大喜びした。
かくして、拡大家族はできあがったのである。
私と息子は朝方で、つっちーは夜型。お互いの生活スタイルを尊重しつつ問題があればその都度話し合う。
プライベートを守りながらも、コロナ禍では、親子二人だけでなくて精神的に随分と救われた。
以前、息子が一人っ子なのを心配していたら、一人っ子の友人が言った。
「親がいなくなっても、ちゃんと自分でつくりたい家族をつくれるから大丈夫よ」
そうなのだ。
大人になった私たちは、つくりたい家族を自分でつくっていいのである。
これからもその時々で、家族の形は変化していくんだろう。
それは決して自分勝手なことではないと私は思う。
あなたがつくりたいのはどんな家族?
この春結婚が決まった「魔女のサバト」メンバーは、婚活しながらも、なぜか結婚向きでない男性ばかり選んで難航していた。
突破口は、心の奥底に「本当は結婚したくない」小さな自分を見つけたこと。
それは、自分の母親と親戚縁者との、ベットリとした濃密なやりとりに心底辟易していた幼い自分だった。
「結婚したら親戚が2倍になる…」
そんな本音が隠れていたのかと、自分自身が一番驚いたという。
そして彼女は、次に出会った男性に、どのレベルの親戚付き合いを希望するか意を決して聞いてみた。
彼の親は転勤族で近所に親戚はいないし、集まるのはせいぜい冠婚葬祭くらいだと聞き、肩透かしを食らったようだと言っていた。
彼女もまた、魔女だったのである。
これを読んでいる魔女たちへ。
あなたはあなたがつくりたい家族をつくればいい。
あなたを幸せにするのは
あなたしかいないのだから。