結婚しなくても幸せになれる時代の相談所の役割
「まじめで頑張っている女性ほど恋愛と結婚がうまくいかない……」そんな人に魔法をかけるべく、女性の人生のプロたちが結集した『魔女のサバト』という婚活予備校。9年前の発足以来、500人以上の女性に、“白魔女”こと金沢悦子さん、“黒魔女”こと川崎貴子さん、そして元サバト生で“妖精”ことトイアンナさんが、悩める女性に「幸せな結婚(人生)のための体質改善と基礎体力づくり」を教えてきました。
これは、トイアンナさんと、人気婚活アドバイザーの“仲人Tさん”との対談です。おふたりは数万人単位の女性たちと接してきた豊富な知見の持ち主。そして、歯に衣着せぬ発言と愛ある“ちょい辛口”の発言から、あなたが幸せになるヒントが見つかるはず。
結婚相談所『結婚物語。』の仲人。結婚相談所界でも殿堂入りするほどの成婚数を誇る。婚活中の人々の耳に痛いアドバイスを、飾らない言葉でつづったアドバイスや人気を博す。成功体験談も交えた婚活応援ブログ「結婚物語。ブログ」(2011年~)が圧倒的支持を得て、メディア出演も多数。著書に『夢を見続けておわる人、妥協を余儀なくされる人、「最高の相手」を手に入れる人。 “私”がプロポーズされない5つの理由』(大和出版)がある。
1人の会員を全員で担当する理由
——第1回目では、「受け身をやめる」「認知の歪みを正す」という、婚活前に自ら気付くことの大切さを、第2回目はマッチングアプリによる婚活の実情と、結婚相談所の“予備校”的役割についてを解説いただきました。
ウートピでは性別や役割で語ることは避けているのですが、婚活という場において「男性は」「女性は」というように全体的な傾向をお話しいただければと思います。最終回は、結婚相談所の多様性についてお聞かせください。
結婚物語。仲人Tさん(以下・T):結婚相談所は突き詰めると、個人対個人です。個人差があり、人相手の仕事なので、“質”の定義が曖昧になりがちです。これを担保することが、業界全体の課題だと思っています。
トイアンナさん(以下、トイ):結婚相談所は、一人の仲人さんが、複数の会員を担当しているイメージがあります。
T:はい。多くの結婚相談所は、仲人1人につき、30~50人の会員さんを担当しています。
トイ:すると、個人の能力の違いが、成婚率に表れそう。新人とベテランには能力の差がありますし、相性だってありますよね。仲人さんの考え方に左右され、望まない結婚をしてしまう可能性も考えられます。
T:やはり、皆さん真面目で必死なので、そのときは「仲人さんが言っているから間違いない」と思っても、後から「こんなはずではなかった」と思うこともあるでしょう。
結婚相談所選びのコツは、「その相談所が、自分が幸せにできる人をわかっているかどうか」です。2回目でもお話ししましたが、“生きづらさ”を抱える人の婚活が得意な相談所もあれば、宗教信者の婚活が得意な相談所もあります。結局、あなたが何を求めているかが大切なのです。
また、仲人と会員が1対1という仕組みの問題もあります。私が所属している結婚相談所『結婚物語。』は、会員さんと仲人が1対1にならず、全員で担当するという、ちょっと変わった仕組みなんです。
つまり、仲人15人が、全員で会員さんの相談に乗り、紹介するお相手を決め、日程調整をしています。結婚までワンチームでサポートする相談所は珍しいと思います。
トイ:お見合いのプロたちが、成功例、失敗例、モデルケースの知見を出し合うから、ものすごいスピードで結婚まで進んでいきそうです。また、1人を複数で担当していると、情報の共有も瞬時にできます。
T:その通りです。また、新人仲人もベテランと仕事をしているから、スキルの習得が早い。これまでに膨大な量の成婚数があるのは、みんなで助け合って、人を幸せにするために全力投球をしているからです。
先ほど、仲人との相性も問題になると言いましたが、それもチームなら解決できます。
トイ:なるほど。それにチームだと役割分担ができますからね。ファッションのアドバイスは〇〇さん、会話のコツを教えるなら〇〇さんというように。それに、それぞれの仲人さんの男性の好みも違いますよね。メンクイ、年上好き、ハイスぺ好き、ダメ男好き……。
T:そうなんですよ。他社さんで「男は容姿より、収入だ」と言われてしょげていた女性がウチに入会したのですが、超イケメン好きの仲人から「顔は本当に大切です。顔が苦手なら次に行きましょう!」とアドバイスされて楽しく婚活を続け、先日成婚退会しました。
このように、気が合う仲人に相談できるのも強みです。「この人にこの内容は相談しにくいけれど、あの人ならいいかな」というように、チームでサポートしています。ですから、仲人と二人三脚で進めたいという人には、ウチは合わないかもしれません。
トイ:Tさんの担当はなんですか?
T:状況の分析がメインですね。会員さんを叱る役割も回ってくることが多いです。遅刻、ドタキャン、相手に失礼なことをした場合はしっかり注意します。ただ、そこで私と気まずくなっても、他の担当に相談すればいいので、成婚まであきらめずに続ける人は多いです。
トイ:私たちの婚活予備校『魔女のサバト』も同じです。川崎貴子(黒魔女)、金沢悦子(白魔女)と私・トイアンナ(妖精)の3人でやっているので、それぞれの個性が出るんです。
黒魔女と白魔女は「モラハラ男子は、ダメ絶対! 性格を見定めろ!」というタイプなのですが、私はダメ男好き。ちょっとダメな人にきゅんとくるんです。だから、ダメ男好きな女子が集まっておしゃべりができる。でも、私といると結婚できないので、独り立ちをします。
自分で立ち上がる前に、ちょっと相談できる人がいると、挫折はしにくくなりますよね。
T:そうなんです。婚活はやはり大変ですから、長引くと、「世間の全てを恨む」という闇のような時期があるんです。仲人とそういう関係になると、退会するしかなくなるのですが、ウチはそうならない。それは、それぞれの仲人が陰に日向に応援しているからです。
それに、仲人にも子どもがいる人、いない人、独身、バツイチなど多種多様です。それぞれの悩みに寄り添えますし、「ホントは結婚したくないけれど、親が言うから結婚しなくちゃいけない」と思って婚活している人に、「あなた、たぶん結婚したくないんだと思う」と、アドバイスもできます。
トイ:成婚して報酬を得るよりも、その人の幸福を優先する……聞けば聞くほど、結婚相談所選びが重要だと感じます。
結婚しなくても幸せになれる時代に婚活をするワケ
トイ:先ほど、結婚相談所に入会される方の若年化についてもお話ししていましたね。どのような人が多いのですか?
T:男女ともに20代で上場企業の正社員が目立ちます。女性はモデルさん、声優さん、CAさんなど。男性は、経営者や医師、弁護士なども多いです。いずれも、若くて婚活している人は魅力的な人が多い。年収も容姿も人並み以上、家事もできて一人暮らしで貯金もある……全てを兼ね備えている人が増えています。
——結婚はコスパもタイパも悪いと言われている時代に、そういう人は何を求めて結婚するのでしょうか?
T:やはり、人は人の役に立ったり、喜ぶ顔を見たりして生きていきたいからだと思います。「信頼でき、愛する人と一緒に生きて、子どもを育てていきたい」「自分の家族を大切にしたい」と言う人は、男女ともに多いです。
それに、ネットの情報と現実は違うんです。おごってあげたいという男性は多いですし、家事や育児に達成感や充実を感じる男性は明らかに増えています。
30代以下の男性の中には、「僕はリモートワークなので家事は任せてください」とか「得意料理は筑前煮とだし巻き卵です」と具体的にプロフィールに書く人も多いです。
また、男女ともに若くて容姿端麗であるほど、「人から見える自分」を考え、相手に何ができるのかを、無理ない範囲で考えています。
等身大の自分で勝負している人には他者をケアする心があるんですよね。35歳を超えて身なりを構わない人のほうが、相手にワガママだったり、どう見られているか見えていない人が多いと感じます。
とんとん拍子に結婚する人の共通点
トイ:とてもわかります。Tさんの言葉が深く刺さりすぎて、心の臓から血が止まりません(笑)。それにつけても、コロナ前より時代は変わっていますね。最後に、ササッと結婚する人の共通点をお伺いしたいです。
T:期限を決めている人です。「半年後に成婚退会する」などと決め、すべきことを書き出す。例えば、4月に入会した場合なら、10月末に退会したい。そうなると逆算して9月の頭には誰か1人と真剣交際に入りたい。そのためには8月までに仮交際(他の人ともデートができ、見合いも可能な段階)を3~4人に絞り込んでおこう…のように、計画を立ててそれに沿って進めていくタイプの方ですね。
トイ:私は常々、婚活はトーナメント制だと言っています。「もっといい人がいるかも」と新しい人が来るのを待ち続けるのではなく、「3カ月で出会った中で、一番よかった人と結婚しよう」と、そこにいる人で決めることが大切。予測できない未来よりも、今に全力投球をする。
T:今あるご縁を大切にするのが、婚活成功者の共通点です。それに、婚活は早いほうがいい。なぜなら、これは男女に限らず、若いほうが有利だから。若ければ、常識を知らなかろうが、容姿が崩れていようが、貯金がなくても料理ができなくても、片づけが苦手でも許される部分はあります。ただ、年齢を重ねるとそうはいかなくなる。
トイ:確かに、若さの輝きと勢いで、許されてしまう。
「結婚したくなかったんだ」と気づくのも婚活
——それでも真面目な女性は「自分で努力しなければだめだ」と考えている人は多いです。プロに頼むのは「自分の努力不足だ」「私の努力が足りないから、プロの手を煩わせて申し訳ない」という罪悪感に悩んだり躊躇(ちゅうちょ)する人も少なくありません。
T:私たちは、そんなあなたの力になりたいんです。罪悪感など捨てて、どんどんプロに頼り、あなたの幸せを探しましょう。そのために私たちがいるんですから。
トイ:そもそも結婚は昔から難易度が高く、かつては“お見合いオバサン”が親族にいて、あれこれと世話を焼いてくれていました。今はそういう人は希少種です。
それに、両親が不仲だったり、離婚も増えて、結婚にいいイメージを持っていない人も多いですよね。
T:それはありますね。「結婚しても、親と同じような冷え切った家庭になるのか」と思っている人は、本音では結婚したくない。だから、相手の悪いところを見つけるのが得意なんです。それを感じた人に、私たちは「結婚のメリットとデメリット」を書き出してもらっています。すると、デメリットばかりを列挙するんです。
トイ:明文化は婚活においてとても大切です。「魔女のサバト」でも、まず「あなたの理想の人生」を50項目、書いてもらっています。
本音では結婚したくない人は、「自由な時間を過ごして、のびのびと一人で生きる」とか「思い立ったら旅行ができる縛られない人生」などを書いている。それに私たちが「結婚したくないや〜ん」と突っ込みを入れると「あ、そうでした」となり、マンションの購入や、親の相続の対策などをし始めるのです。
T:それに気づくのも婚活ですよね。でも、結婚相談所ってミラクルを起こすんですよ。ある女性は「毒親育ちだから、トラウマで結婚できないかもしれない」と思い込みつつもお見合いしていたんです。相手の男性は、幼少期のトラウマなど全く気にしない、ホンワカとした人でした。その人と交際を続けるうちに、性格が劇的に変わり、成婚退会しました。
トイ:思い込みを、幸福と愛で上書きする相手と出会うのは奇跡!
T:親愛の情を相手に注ぎ、相手を裏切らずに隣にいてくれる人は、性別を問わず、相手を満たし幸せにします。これも相性なんですよね。
トイ:人は人の出会いによって変わる……まるで、Tさんがサポートする婚活は、『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビ版の最終回のよう。「僕はここにいていいんだ!!!」という納得感と、そしてみんなからの「おめでとう」。あの作品は、母が早逝し、父親に存在を認められなかった少年の物語で……。
T:それです!!! まさに親子の問題は大きい。親に不安にさせられたまま育った人は、不安な状態がニュートラル。それゆえに、不安じゃなくなると、居心地が悪くなる傾向があります。
トイ:私が名付けた「不安定の中の安定」の人間関係。先述の「認知の歪み」とは性質が、異なりますが、不安に安心してしまうのは根深い問題だと感じます。
T:私はそういう方にこそ、遠慮せずにアドバイスをします。「相手を試すような言動はやめなさい」「相手への過度な依存はいい結婚になりません」などなど。かなり耳に痛いことを言ってるのですから、別の仲人さんに相談すればいいのに、私を指名するのは、ダメ出しという不安定な状況が心地いいからなんでしょうね。
結婚しなくても幸せになれる時代の結婚相談所
トイ:そういう人は、誠実でレベルの高い人に会えればいいのでしょうけれど、そういう人は結婚していますから……。とはいえ、Tさんは多くの人々を成婚に導いています。これから結婚を望む読者に、アドバイスをお願いします。
T:いつか結婚したいなら、早めに動いて損はありません。でも何歳でも幸せな結婚はできます。多様性の時代です。結婚してもしなくても、あなたの幸せが叶う人生を歩んでください。そこで伴侶を求めるなら、私たちはきっと力になれます。
トイ:望むところに道は開かれており、あなたの幸せをサポートするプロがいることを、多くの人に役立ててほしいと感じました。婚活は難事業だからこそ計画が必要ですね。
T:そうです。でも、ノリとインスピレーションで、パパっと結婚する人もいます。これが婚活の奥深く、面白いところです。
——目に見えない縁を選び、つかみ取る握力と握り続ける精神力。Tさんもトイアンナさんも、「結婚相談所は予備校、お見合いは模試」と言いました。プロの水先案内人を活用しつつ、自分の幸せ探しの挑戦を始めるのもいいかもしれません。
(構成・執筆:前川亜紀)